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浦和地方裁判所 平成10年(む)B70号 決定 1998年2月27日

主文

本件各準抗告の申立てをいずれも棄却する。

理由

一  申立ての趣旨及び理由

本件各申立ての趣旨及び理由は、申立人作成の平成一〇年二月二四日付け準抗告申立書に記載のとおりであるから、これを引用する。

二  当裁判所の判断

別紙記載のとおり。

三  よって、本件各申立てはいずれも理由がないので、刑事訴訟法四三二条、四二六条一項を適用して、主文のとおり決定する。

(別紙)

一 捜索差押許可の各裁判の取消を求める点について

申立人は、本件捜索差押許可の取消を求めるが、捜索許可の裁判は、刑事訴訟法四二九条一項二号所定の「勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する裁判」にはあたらず、また、差押許可の裁判は、これに基づく差押が実施された後は、右裁判自体の取消を求める実益がなく、準抗告は認められないものと解されるところ、本件記録によれば、本件において差押許可の裁判による差押えが既に終了したことは明らかであるから、本件捜索差押許可の各裁判の取消を求める点は不適法というべきである。

二 各差押処分の取消しを求める点について

1 まず、本件各差押処分の前提として、本件捜索差押許可の裁判の適法性について検討する。

本件被疑事実の要旨は、被疑者の使用する普通貨物自動車が、「自動車から排出される窒素酸化物の特定地域内における総量の削減等に関する特別措置法」(以下「NOX規制法」という。)に抵触し、その車種規制により規制対象車両となるため、NOX規制法の特定地域外のナンバーとするべく、使用の本拠地につき虚偽の記載をした申請書を提出して、電磁的記録である自動車登録ファイルにその旨不実の記録をさせ、これを人の事務処理の用に供したというものであるところ、本件関係記録によると、被疑者は、真実の使用の本拠地ではないNOX規制法の特定地域外の住所を使用の本拠地とする申請書を提出し、自動車登録ファイルに記録させたことが認められるから、被疑者が右被疑事実を犯したと思料される状況が認められる。

ところで、本件関係記録によれば、本件捜索差押の各目的物は、いずれも明示特定に欠けるところはなく、またいずれも本件被疑事実それ自体のほか、本件犯行に至る経緯、動機、とりわけ本件の組織的背景及び組織的関与の有無の解明に資するものと認められるから、本件被疑事実との関連性があることは明らかであって、差押の理由及び必要性を肯認することができる。

また、申立人は、可視性・可読性のない情報を取得するために、パソコン、電子手帳その他各種磁気記録媒体等そのものを差し押さえることは許されない旨主張するが、磁気記録媒体に記録された情報自体には可視性、可読性がないから、本件被疑事実と無関係な情報について、磁気記録媒体自体の外見から除外することは不可能であり、しかも右磁気記録媒体等の読み取り等コンピューターの操作について被処分者の任意の協力が必ずしも期待できないことも考えれば、捜査目的を達するため、本件被疑事実についての情報等が記録、保存されている蓋然性が高いと認められる磁気記録媒体それ自体を差し押さえることに違法な点は存しない。

2 そこで、本件各差押処分の適法性について検討する。

本件において差し押さえられた機関紙「覚醒の時」一冊、赤色ファイル一冊、ノート型パソコン一台、透明ファイル一冊、フロッピーディスク三四枚、同一〇枚、データ付き腕時計一個、フロッピーディスク五〇枚、同一四枚、ゴミ袋(パソコン取扱説明書等在中)一袋については、本件が組織的に敢行された可能性が強いところ、いずれも本件の組織的背景及び組織的関与を裏付ける情報等が記載又は記録されている蓋然性が高く、本件被疑事実自体の証明のほか、本件犯行に至る経緯、動機、とりわけ右組織的背景及び組織的関与の有無の解明に資するものと認められることに加え、本件捜索差押許可状記載の「差押えるべき物」に各該当することも明らかであって、本件各差押物件と本件被疑事実との関連性は優に認められ、以上に鑑みれば各差押の理由及び必要性もまた肯認できる。

なお、申立人は、本件捜索差押の執行手続に際し、令状を十分に呈示しなかった、同居人に対する顔写真を強要した、電話交信を妨害した、といった重大な違法がある等主張するが、当裁判所の事実取調べの結果によれば、令状の呈示については、本件捜索差押において、担当捜査官が、処分を受ける者に対し、本件捜索差押許可状を呈示し、その内容を説明したことが認められ、所論はその前提を欠くというべきである。写真撮影については、顔写真を撮影するために行われたものではないうえ、本件捜索差押許可状が捜索場所に所在する者の身体、所持品の捜索を許可し、右は本件捜索の一環として実施されたものと認められ、また捜査員による電話交信の切断についても、捜索現場の外部と連絡を取り、本件捜索差押を妨害するおそれが大きい状況下において、本件捜索を適正に実施するためになされた必要な措置と認めることができるから、右各措置が本件各差押処分の取消事由とならないことは明らかである。

その他本件記録を精査するも、本件各差押処分を取り消すべき事由は認められない。

準抗告申立書(省略)

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